ズレていく自然の時計と私たちのカレンダー
最近、「春が来るのが早くなったな」と感じることはありませんか?
実はこの変化、私たちの食卓を支える農業の現場に、ちょっと困った「ズレ」を引き起こしています。
自然界の害虫や病原菌、雑草たちは、カレンダーを見て動いているわけではありません。
彼らが頼りにしているのは、気温や日の長さといった「環境のサイン」です。
春の訪れが早まれば、彼らも「お、そろそろ出番だ」と早めに活動を始めてしまいます。
一方、私たち人間は「〇月〇日に種をまく」、「〇月になったらこの薬をまく」と、カレンダーを見ながら習慣で動ぎがちです。
すると、「敵(病害虫)はもう攻めてきているのに、守りの準備ができていない!」というピンチが生まれてしまいます。
米や果物のように、地域ごとに「いつ、何をすべきか」をまとめた『防除暦』という病害虫攻略本が存在する作物では、「いつもどおり」とカレンダーどおりに動いていると、気づいた時には病害虫がすでに大発生……なんてことも。
敵が大軍なってから戦うのは大変です。
防除が「後手後手」に回ると、効果は薄れ、作物を守りきれなくなってしまいます。
ここで登場するのが正義の味方の地域の農業技術者の方々。
無駄な薬を使わず、最も効果的なタイミングを提案してくれます。
また、野菜は種類も豊富で、育てる時期もバラバラ。
さらに収穫が終われば畑は耕耘され、地面はさら地に戻ったり、環境がコロコロ変わるので、「こんな症状が出たらこの対策!」という作戦を立てるのにありがたい存在です。
これからの農業に必要なのは、カレンダーの日付だけにこだわらず、 「今年はサクラが咲くのが10日早いな。ということは、あの害虫が発生するのも早まるかも?」 そんなふうに、生き物たちが発するサイン(生物ごよみ)を読み取ることが、最高の防除への第一歩になります。
地域の自然をじっくり観察すること。それが、変わりゆく地球環境の中で、おいしい野菜や果樹、お米を守り抜くための、一番の武器になるのです。
